ようこそ!犬プリの世界へ    
  
 
 
 
 
 
 
 
 

 整数問題

 史上最大の数学者ガウス(Gauss, Carl Friedrich 1777~1855 ドイツ)は

数学は科学の女王であり、整数論は数学の女王である

という言葉を残しました。つまり、「整数論は科学の中で最高位に位置する学問分野である」 というわけです。ともすれば私たちは「数学は科学の基礎であり、整数論は数学の基本である」 と単純に捉えがちですが、それを「女王」という言葉で表現したガウスのセンスは素晴らしいと 思います。それは、科学の中で数学、とりわけ「整数論」が最も美しく神秘的な魅力をもっていることを 意味しているのです。

 そして、ガウスの言葉にはもう一つの意味が込められています。それは,数学の支柱となる ような重要な考え方のほとんどがこの整数論に含まれているということです。 つまり、整数論は科学にとって最も大切な思考方法を学ぶことができる学問分野であると いうことです。
 日本が生んだ最初の世界的数学者である高木貞治(1875~1960)も 「整数論の方法は繊細である,小心である,その理想は玲瓏にして 些の陰翳をも留めざる所にある.代数学でも,函数論でも,叉は幾何学でも,整数論的の 試練を経て初めて精妙の境地に入るのである.」と述べています(初等整数論講義第2版序言)。 代数的整数論の世界的権威で、類体論の創始者である氏の真に奥の深い言葉だと思います。  整数論の問題(以下、整数問題)を解決する場合の基本的な考え方とは、すなわち、

です。確かにこれらの考え方は、数学に限らず科学の各分野に応用される考え方でしょう。 整数問題を考えることは最高の思考訓練になるのです。

 旧課程では整数問題が難関大学を中心に頻出の分野でした (特に、京都大学、一橋大学ではほぼ毎年出題されてきました)。 変な受験テクニックや解法パターンの暗記に頼ることなく、本質をじっくり考えてもらおう、 というのが大学側の意図するところでしょう。 新課程では、数学Aに『整数の性質』として導入されましたので、今後は 難関大学に限らず全ての大学での出題が予想されます。

 しかしながら、整数問題を解くには整数特有の性質に着目することが多く、 その性質を知っているかどうかが正解へのカギを握っています。 また、一部に他分野(方程式、図形、関数など)との融合問題も見られ、見た目には 整数問題かどうかわからない問題もありますが、示すべき内容、方法は共通しているので、 いずれにしても、整数特有の性質、解決の手法を知らないとどうにもなりません。 確かに、この整数特有の性質は「予備知識がなくても考えればわかること」ではありますが、 極度の緊張状態の入試本番において思いつくのはなかなか厳しいものがあるため、 十分な事前の対策が必要でしょう。

 整数問題を苦手とする受験生は多く、入試でも「ほとんど解けなかった」という 感想をよく聞きます.また、解けたと思っても,記述内容に論理的飛躍、欠陥があることも多く、 正答率は極めて低いと思われます。ということは、逆に、整数問題が解ければ他の受験生に差をつけ 合格にグッと近づくことになるわけで、整数問題の出来、不出来が合否に大きな 影響を及ぼすといっても過言ではありません。

 新課程になり、整数問題を扱った参考書も増えてきました。 『大学への数学 マスター・オブ・整数』(東京出版)は古くからある 整数問題の本格的な参考書ですが、内容があまりにも広範囲に渡っていて少し難しすぎる でしょう(理学部数学科に進学して、将来、整数論を研究する気がある人は別ですが)。 確かにこの本を勉強すれば整数問題に関しては完璧になるでしょうが、他教科の学習のことも 考えると、マスターするにはあまりにも時間がかかりすぎてちょっと大変です。 そこで整数特有の性質や整数問題の攻略方法を短期間で効率よく理解するために、 『整数問題の攻略(原則編)』『同(基礎編)』を用意しました。これらを熟読すれば 整数問題攻略の基本的な考え方を習得することができるでしょう。強くおススメします。

奈良県数学教育会誌(第49巻)掲載の原稿 奈良県数学教育会発行の会誌(平成19年度版)に、私の拙文が掲載されました。新課程での「整数問題」分野を 想定しての原稿でした。
整数問題の攻略(原則編)
整数問題の攻略(基礎編)
上の原稿の源がこれです。かなり膨大な量なので、受験勉強には不向きでしょう。すみません。
整数問題攻略のための5つの原則
(2015.5.16)
PDF
上の原稿をさらに精査しました。整数問題の考え方の要点をコンパクトにまとめてあります。
整数問題攻略の5つの原則を紹介してあります。具体的には
原則① 整数の離散性
原則② 整数の候補を絞り込む
原則③ 特定の整数で割った余りに注目する
原則④ 素因数分解の一意性
原則⑤ 具体例で実験する
です。大切な考え方ですね。
整数問題の攻略
(基礎編)
(2015.1.15)
PDF
この『基礎編』では整数問題の解き方の基本をコンパクトにまとめました.具体的には
① 余りで分類する  ② 平方数の分類   ③ 指数型
④ 素数pの性質   ⑤ 互いに素     ⑥ 偶奇性
⑦ 周期性
です。大切な考え方ですね。なお、前回まで ⑧ガウス記号 を入れてましたが、基礎編に ふさわしくないと判断し外しました。また別の機会に解説します。
合同式について
(2015.5.12)
PDF1 / PDF2
合同式は教科書では発展事項として扱われていますが、ぜひともマスターしたい考え方です。 ある意味「アタリマエ」のことをシンプルに表現しただけのことで、そんなに難しいことでは ありません。具体例を通して、合同式のありがたみを感じて欲しいですね。
平方数の分類
(2015.9.12)
PDF1 / PDF2
平方数を3,4,5,8で割った余りは,かなり特徴的な振る舞いをします.このことに関連した入試問題は 昔からあって,今となっては少々時代遅れな感が否めませんが,それでも重要なことに 変わりありません.頭の片隅にでも入れといてください.
互いに素(Part1)
(2015.8.14)
整数問題の様々な場面で,2つの整数が「互いに素」であるかどうかが重要な意味をもつことが多々あります. 「互いに素」の意味を基本的な証明方法を確認しておこう.
互いに素(Part2)
(2015.8.31)
PDF1 / PDF2
入試では、互いに素であることを証明させる問題より,互いに素であることを 利用して考える問題の方が多く出題されているようです.このプリントでは, そのような「互いに素」を利用する代表的な問題をいくつか紹介します。 ちょっと難しめですががんばって理解しようと努めてください。
ax+byの話
(2016.6.24)
a、b、cを整数、aとbが互いに素のとき、 ax+by=cを満たす整数x、yについての問題は頻出の有名問題です。 とにかく実例を重視して、具体的にやってみることです。 ax+by=1を満たす整数x、yが必ず存在することの証明も紹介していますが、 最初は無視してかまいません。とにかく実例勝負です。
ユークリッドの互除法入門
(2016.6.6)
「ユークリッドの互除法」とは、大きな2つの整数の最大公約数を求めるのに 効果的な手法です。まずはその仕組みを理解し,正確に最大公約数を求められることが 基本となります。筆算による表記を紹介したいと思います。
座標筆算法
(2016.6.13)
aとbが互いに素であるとき、ax+by=1を満たす整数x、yが 必ず存在することが知られています。このタイプの問題では「とにかく1組見つけること」が、 最優先課題です。aとbが小さい数ならばカンで見つけられますが、数が大きいと なかなか見つけることができません。原則的に「ユークリッドの互除法」の逆をたどれば 求めることができるのですが、なかなかメンドウです。そこでこの「座標筆算法」を開発しました。
座標筆算法の練習
(2016.6.14)
上で紹介した「座標筆算法」に慣れるために、少し練習しましょう。 ポイントは、最初のフツーの筆算で商を正確に出すことと、座標筆算での 初期設定です。ここをクリアすれば、サクサクと求めることができるでしょう。
ユークリッドの互除法
(2015.9.7)
PDF1 / PDF2
「ユークリッドの互除法」とは、大きな2つの整数の最大公約数を求めるのに 効果的な手法ですが、それ以上に大切なことは、「互いに素」の証明に利用できることです。 そういう意味で、このプリントは「互いに素(Part3)」ともいえます。 しっかりと仕組みと意味を理解しよう。
基礎の隙間
(2015.9.23)
PDF1 / PDF2
整数問題の基礎事項の中で「指数型の扱い方」「偶奇性」「周期性」の3つをまとめて紹介します。 「基礎の隙間」というタイトルではありますが、いずれもとても重要な考え方なので、 しっかりとマスターしてください。
パクッた?
(2015.9.8)
2002年の東京大学の問題と2013年の京都大学の問題を紹介します。なんとこれが全く同じ問題なんです。 「互いに素」の証明問題ですが、数列との融合問題なので数学的帰納法が根底にあります。 「互いに素」の証明自体は極めて典型的なので、大学に名前負けせず、しっかりと読み進めてほしいです。
整数問題としてのガウス記号
(2015.8.25)
PDF1 / PDF2
ガウス記号[x]に拒絶反応を示す生徒が多いようです。というのも、高校の教科書では ガウス記号は数学Ⅲで不連続関数の例として紹介されており、4step問題集などでも、 ガウス記号は、わけのわからん極値を求める問題や連続性の証明問題で扱われており、 このことから「ガウス記号=ムズイ」という印象を持ってしまうのでしょう。 本来、ガウス記号は整数問題で扱われるべきで、この部分に触れずにガウス記号に 変な先入観を持ってしまうのは残念なことです。 このプリントでは、ガウス記号の整数問題的な側面に注目しました。 少し難しいですが、難関大学志望者はぜひとも理解しておきたいところです。
素因数の個数(2014.10.1) 「N!は素数pで最大何回割れるか(=素因数分解したときの素因数pの指数は何か)」という問題は 定番中の定番ですが、求め方を知らないとどうにもならないと思います。なぜ、そのような求め方になるのかを しっかり理解した上で、使いこなせるようになっておこう。
「余り」の美しさ
(2015.1.29)
PDF1 / PDF2
「余り」に関する美しい性質を紹介します。いわゆる「完全剰余系」の話なんですが、 ここではそのことには触れずに、内容だけを紹介しました。不思議さ、美しさを実感して ほしいです。なお、私が高校生だったころは 入試頻出のテーマでしたが最近はあまり登場していません。新課程に整数問題が 導入されたことを契機に、再びメジャーになるかもしれませんね。
トップページにもどる
inserted by FC2 system