ようこそ!犬プリの世界へ    
  
 
 
 
 
 
 
 
 

吹奏楽部顧問として

 2017年(平成29年)4月より帝塚山学園吹奏楽部の顧問になりました。 大学時代、オーケストラ活動に熱中し(「趣味の世界」の『音楽遍歴』のページ参照)、 「いつかは音楽系クラブの顧問をやりたいな」と思って教員になりましたが、なかなか自分の思い通りにはいかず、 21年間ひたすら運動系クラブの顧問をしてきました(カヌー部、ソフトテニス部、アーチェリー部、野球部などの顧問をしてきた)。 運動系ですから、休日にも練習があり、自分の楽器に触れる暇もなく、音楽とは全く無縁の世界を渡り歩いてきました。 生徒が音楽系クラブで活動している様子を横目に見ながら、 「ああ、楽しそうやなあ・・・僕も、いつか音楽系の部活顧問やりたいなあ。でも、無理だよなあ・・・」と 半ば、あきらめかけていた矢先に、突然、吹奏楽部顧問就任の話が舞い込んできました。 「音楽系クラブの顧問をやる」という夢がやっと実現したわけです。嬉しかったですね。 自分の趣味、特技が活かせる部活動の顧問ができるようになるのに実に21年かかりました。 さすがに21年間も待ち続けたのは、本当に長かった。

 他校の吹奏楽部顧問の先生方を見ると、吹奏楽経験者(楽器経験者や顧問経験者)がほとんどのようです。 吹奏楽一筋ウン十年の顧問も多く、私のように、45歳になって全く初めて、吹奏楽経験ゼロでこの世界に入った人は 珍しいのではないでしょうか。 確かに、経験がモノを言う世界だと思います(やはり指揮は「習うより慣れろ」です)。 「もう10年早く、この世界に入っていればなあ・・・」とつくづく思います。失った時間は戻って来ません。 私はヴァイオリンが専門なので、弦楽器の指導には自信がありますが、 管楽器は吹いたことも触ったこともないので、具体的な指導方法はサッパリわかりません。 こんな状態で吹奏楽部顧問が務まるんかいな・・・と不安に思いながら顧問生活が始まりました。

 吹奏楽の指揮者デビューはいきなりやってきました。 顧問発表からわずか10日後、2017年(平成29年)4月16日の第43回定期演奏会です。当初予定されていた指揮者の都合が つかなくなり、急遽、代役として指揮台に立つことになったのです。 楽譜を渡されたのが、本番の1週間ほど前でしたが、楽譜を頭に叩き込み、完全暗譜で練習、本番に臨みました。
 いやあ、さすがにテンション上がりましたねえ。21年間の積年の思い(顧問をやらせてもらえなかった恨み?)が 沸々とわいてきて、久しぶりの指揮に燃えました(笑)。この指揮台に立つまでに21年もかかったんですよね。 吹奏楽の指揮は全く初めてだったけど、嬉しくて嬉しくて・・・感激ですよ。
 実は、初合奏の時まで、吹奏楽がB♭でチューニングすることすら知りませんでした。 オーケストラはAでチューニングするので、吹奏楽もてっきり同じだと・・・・・。 で、チューニングの音を聴いてびっくりしました。 21年間も音楽から離れていたから、ついに自分の耳がおかしくなったのかと思いましたね。 部員に「ホントにチューニングのAの音合ってる?」と聞いたら「えっ? B♭で合わせてるんですけど・・・」と言われ、 恥ずかしかったです。今となっては笑い話ですが・・・
 初合奏の感触はいまだに憶えています。私の指揮よりもどんどん早く音が出るんです。おそらく 私のテンポが遅めだったのでしょう。みんな自分のテンポで勝手に吹くんですね(笑)。 指揮を見てないわけではないんでしょうけど、とにかく、「指揮に合わせる」ということができない。 まあ、定期演奏会1週間前で、それまでの練習でテンポ感が染みついている状態のところに、 突然、これまでとは全然違うテンポの人が指揮したわけですから、混乱するのも当然でしょうけどね。

 幸いにして、私の指揮は好意的に受け入れられたようで、私の指揮する曲も徐々に増えていきました。 しかし、吹奏楽の知識は全くないので、合奏してて「何かおかしいな」と思っても、具体的に どうすれば改善されるのかがサッパリ分かりません。まさに感性だけを頼りに、手探りでやってる状態です。
 正直なところ、吹奏楽曲はそれほど好きではないのですが(失礼ながら・・・)、 曲の端々にクラシックの作曲家の作風を感じる部分が多々あり (例えば、ワーグナー的、ブルックナー的、Rシュトラウス的、マーラー的、バルトーク的・・・とか)、 それらの曲を聴き込んできた(演奏してきた)経験から合奏に臨んでいます。 「こんなイメージで吹いて」 「僕には今、こう聞こえてる。こんな感じに聞こえるように、吹き方を変えれる?」といった ある意味、具体的ではない曖昧な指示になってしまうので、部員も困惑したかもしれませんが、 よく私の練習についてきてくれました。 さずがに
「ジークフリートの森のささやきみたいな感じ」
「ブルックナーの交響曲第7番冒頭のようなレガートで」
「ブルックナーの交響曲第8番第4楽章のティンパニの強打のように」
「ショスタコーヴィチの交響曲の打楽器のように」
「春の祭典のファゴットとアングレの掛け合いみたいな感じ」
「これは、チャイコフスキーのワルツそのもの」
「大地の歌の『告別』の最初のオーボエのように吹いて」
「『火の鳥』の最後の一瞬音が消えるみたいな感じ」・・・
と言っても部員はキョトンとしてました(笑)。自分の頭の中では確固たるイメージができてるんですけどね。
 ちなみに、吹奏楽曲は1度も聴いたことありません。 楽譜だけを見て自分の頭の中でイメージしています。 部員から「どの音源を聴けば参考になりますか?」と聞かれるんですが、 自分は一度も聴いたことないので答えようがないんですね(笑)。

 さて、顧問になった年の秋ごろ、当時の幹部が「来年の吹奏楽コンクールの指揮をしてほしい」と言ってきました。 吹奏楽経験わずか7ヶ月ほどのド素人の私に、大切なコンクールの指揮を依頼するなんて何と無茶な!  その時、私は「吹奏楽のことを何も知らないのに・・・自分には絶対に無理だ」と思いましたが、彼女たちの 「基礎的な部分は全部自分たちでやります。赤阪先生には音楽面を鍛えてもらいたい。どうしても赤阪先生の力が必要なのです。」 という熱意に打たれ、コンクールの指揮を引き受けました。 引き受けた以上はその責務を果たそうと、私も懸命に努力しました。
 いやあ、大変でしたね。そもそも何も知らないんですから。 特に課題曲のマーチの扱い方に苦労しました。なにせ、46年の人生でマーチを一度も演奏したことなければ、 もちろん指揮したこともないわけですからね。他校の吹奏楽部顧問とは経験値が違いすぎます (後に、コンクールの本番で他校の先生がマーチを指揮しているのを見て、 私のイメージするマーチとはずいぶん違うもんだなあ、と思いました。私にはああいう指揮はできない)。
 練習中、しばしば部員と意見の衝突もありました。なにせ、合奏中や合奏終わりに、 どんどん私に意見(文句?)をぶつけてくるのです。そりゃあ、私からすれば目の前の演奏者全員が、私よりも 吹奏楽経験が長いわけだし、部員から見ても「私たちの方が吹奏楽のことをよく知っているぞ」という 自負もあったのでしょう。 毎合奏が「私と部員の勝負」みたいな感じでした。お互いに妥協せずに言い合いみたいな感じの時もあった。 しかし、その衝突もお互いに「良い音楽を創りたい」という意識から生じるものだったので嫌な気はしませんでしたね。
 コンクール本番の演奏は、それまでの練習の中で一番出来が良かったと思います。本当に素晴らしかった。 演奏後は「ひょっとすると・・・」とちょっとだけ色気も出ましたが、結果は「銀賞」。やっぱり現実は厳しかった。 他校の(金賞校の)演奏を聴いて、まだまだ私たちとの差は大きいことを痛感しました。 それでも、今の段階で自分たちにできることはすべてやったし、 順位だけ見れば、近年最高の結果だったので(12位/19校、金賞9校)、 部員にも、悔しさ以上に達成感と手応えがあったと思います。これまで全く雲の上のだった金賞校の背中が少しだけ見えた瞬間でした。
 このコンクールを通して、私の吹奏楽経験値も少し上がりました。

 コンクールを通して私が学んだことは多々ありますが、やはり「信頼関係の大切さ」これに尽きます。 私を指揮者に選んだ幹部達とは喧嘩もしたけど不思議とウマが合った。私自身が素人だから、 コンクールも「私が指導した」「私に指導された」というより「一緒に頑張った」という意識がお互いに強くあったと思います。 なんて言うか、コンクールを通して「戦友」みたいな関係になれた。 あの幹部達はみんな私を信頼していたと思うし、私もあの幹部達のことが 大好きだったから、その後も一緒に音楽をするのが楽しくて仕方なかったですね。 私は「あいつらのために頑張ろう」と思うし、幹部達も「先生について行こう」と思う。 あのような信頼関係を構築できたことは、本当に素晴らしいことでした。心から「ありがとう」と言いたい。

 しかし、それでもなお、吹奏楽の指導はやはり難しい。指揮する機会を増やして、合奏経験を積み重ねるしかありません。 しかしながら、本校特有の諸事情により、なかなか指揮する機会が与えられないのも事実で、 単に顧問の経験値という観点で見れば、他校との差は開く一方なのです。なんとかならないものでしょうか。

 コンクールのページをご覧になればわかりますが、帝塚山学園吹奏楽部は県下で最も古い歴史をもっています。 30年ほど前は金賞の常連校であり、県代表として関西大会で銀賞をとったことあるようですが、残念ながら、 コンクール不出場期間を経て、時代の変化や生徒の多様化の波を経て、ずいぶん雰囲気が変わったようです。 現在の吹奏楽部の様子は、楽しく活動してはいるものの、当時のように「上手い」とは言えない状態です。 吹奏楽コンクールでも、最近はずっと銀賞に甘んじており、往年の響きを知る方々にとっては歯がゆい思いが するのではないでしょうか。
 私は、厳しさと緊張感を保ちながら、部員全員が真剣に同じ目標に向かって活動している部活にしたいと考えています。 もちろん「楽しさ」も必要ですが、「楽しいだけ」の部活には未来がありません。100人近くを要する大人数の部活ですから、 さまざまな考え方を持った人もいるでしょう。まずは「みんなの気持ちをそろえていく」ことから始めなければなりません。
また、「幹部組織の改革」、「選曲のあり方」、「個人練習やパート練習場所の確保」、「顧問の指導力向上」なども必要でしょう。 まだまだ課題は山積しています。
 最初にも述べたように、私はヴァイオリンが専門なので、本来は弦楽部の顧問をするのが、 私も生徒も双方にとって有益だとは思います。しかし、吹奏楽部の頑張っている部員を見ていると、 「なんとか、この部員らに良い思いをさせてやりたいな」という気持ちも沸いてきます。
 なので、自分が吹奏楽部から必要とされるうちは、しばらく顧問を続けたいと思います。

私の指揮した曲目

私が指揮した曲目と舞台をまとめました。他校はどんな様子なんでしょうかね。多いような少ないような・・・。

曲目 演奏会 コメント・感想
魔法にかけられて 第43回定期演奏会 顧問就任10日後の指揮者デビュー曲
ダンス部との共演なので、ダンスの動きに合わせるべきなのだが 自分の指揮で必死。クラシック作品にはない曲構成(コマ切れの曲の寄せ集め)だったので テンポの変わり目の指揮に苦労した。幸いテンポの変わり目はドラムから始まるので、ドラムの生徒と 指揮の振り方を打ち合わせした記憶がある。
交響詩「フィンランディア」(シベリウス) 2017サマーコンサート 学生時代にオケで何度も弾いてきた思い出深い曲。吹奏楽でぜひともやりたかった。 部員はクラシックアレンジ作品を演奏した経験が全くないらしく、新鮮だったのではないか。 ただ、練習時間が少なく、満足のいく出来には程遠かった。 楽譜も古かったので(スコアはコンデンススコア)、ぜひ新しい楽譜でもう一度チャレンジしたい。
キャンディード序曲(バーンスタイン) 第44回定期演奏会 バーンスタイン生誕100周年記念ということもあり思い切って選曲。 難しかったが楽しかった。ただ、悔やまれるのはエスクラがいなかったこと。 絶対にエスクラ使うべきだった。曲最後のコーダ部分(2拍子と3拍子が混在するところ)の指揮は、 どう指揮すれば分かりやすいか、何度も何度も考えた。結果、我ながら上手く指揮できたと思う。
フェニックス~時を超える不死鳥の舞い~
           (八木澤教司)
第44回定期演奏会
2018第60回吹奏楽コンクール
2018サマーコンサート
初コンクール曲。私の得意とするクラシックアレンジで挑戦したかったが、 技術的にまだ追いついていないので諦め、できるだけ簡単な曲にすることを条件に 生徒に選曲させて決まった。平易でシンプルな楽曲であるが変化に富み聴かせどころの多く、 やってみると意外に楽しかった。
オズの魔法使い 平城宮跡オープニングセレモニー
第44回定期演奏会
昨年に引き続き、定期演奏会ではダンス部と共演。今回はかなり ゆとりをもって指揮できた。オープニングセレモニーは、屋根のない砂埃の舞う屋外での 演奏で、客席もなく通りすがりの方々に聴いていただく感じだった。 高円高校の演奏を間近で聴いて、音が我々とは全く違うことにショックを受けた。
コンサートマーチ「虹色の未来へ」(郷間幹男) 2018第60回吹奏楽コンクール
2018サマーコンサート
人生初マーチ。前任校の吹奏楽顧問の先生が「やっぱりマーチは難しい」と言っていたのを痛感した。 自分で指揮しても「枠にはまったがんじがらめの演奏」みたいな感じだった。私のイメージするマーチの テンポはかなり遅いらしい。
鷲の舞うところ 第45回定期演奏会 定期演奏会のオープニングとして演奏。全学年出演だったので、大人数での合奏になった。 先輩と後輩の出会いみたいな雰囲気で楽しかった。他の曲もそうだが、自分の音のイメージが なかなか表現できないことに苦労した。
天国の島 第45回定期演奏会 冒頭の合わせに苦労した。
スケルツァンド 第45回定期演奏会 楽曲としての完成度が高く、演奏していて実に面白かった。 ある意味で吹奏楽的ではない曲。
第一組曲(ホルスト) 第45回定期演奏会 吹奏楽の名曲。よく「クラシック作曲家のホルストが、吹奏楽のために作曲した」と 言われるが、私は少し違うと思った。ホルストはこの曲をオーケストラをイメージして作曲したと思う。 それを吹奏楽用に書き直したのではいか。オーケストラの響きを思わせる部分が所々にある。
交響詩「フィンランディア」(シベリウス) 2019サマーコンサート 2年前のサマコンと同じ「フィンランディア」に再挑戦。今回はちゃんとした 楽譜を用意した。
トイズ・パレード(平山雄一) 2021第63回吹奏楽コンクール
百年祭(福島弘和) 2021第63回吹奏楽コンクール
トップページにもどる
inserted by FC2 system