漸化式について
漸化式によって定まる数列の一般項を求めることを「漸化式を解く」といいます。
言うまでもなく,数列の一般項を求めるとは,第n項anをnの式で表すことです。
漸化式には基本的な型と決まった解き方があります。
これから,この基本形と解法パターンを順番に紹介していきますが、
全部でどのくらいあるのかというと,ざっと思いつくだけで16種類(!!)もあるのです.
その全パターンの解き方をまとめたのが
です。「解き方」だけを紹介しています。「なぜ、そう解くのか」という疑問には、
以下の犬プリで詳しく紹介してあるので、興味ある人はお読みください。
「とりあえず、解ければいいや」という人は、この漸化式ハンドブックだけで十分でしょう。
また、最近の入試問題では「漸化式を解け」という問題はほとんど出題されません。
最近は「漸化式を使って考える」や「自分で漸化式を作れ」という問題が主流です。
なので、今回の改訂(ver.3)では、自分で漸化式を作る問題を充実させました。
自分で漸化式を作る問題は「自分で作る」ことがメインなので、漸化式自体はとてもシンプルです。
ですから、これからは、マニアックな漸化式の解法をたくさん憶えるのではなく、
解法はシンプルな漸化式だけで憶え、
意味をしっかり考えて自分で漸化式を作りだす学習に重点を置いた方が良いでしょう。
注意!!!
漸化式ハンドブック作成を機に、Typeの番号、重要度(★の数)を見直しました。
★の数は「多い方が難しいそうな感じがする」という指摘があったので、逆にしました。ややこしくてすみません。(2017年2月25日改訂)
漸化式の基本16パターンのまとめ
an+1=pan+q 型 | p=1のとき | an+1=an+q (→等差数列型) | Type① | ★ |
q=0のとき | an+1=pan (→等比数列型) | Type② | ★ | |
p≠1、q≠0のとき | an+1=pan+q | Type③ | ★ | |
an+1=pan+f(n) 型 | p=1のとき | an+1=an+f(n) (→階差数列型) | Type④ | ★ |
p≠1のとき | f(n)が指数関数の場合 | Type⑤ | ★★ | f(n)が整関数の場合 | Type⑥ | ★★★ |
$a_{n+1}=\dfrac{p a_n+q}{r a_n+s}$型 | q=0のとき | $a_{n+1}=\dfrac{p a_n}{r a_n+s}$ | Type⑦ | ★★ |
q≠0のとき | $a_{n+1}=\dfrac{p a_n+q}{r a_n+s}$ | Type⑧ | ★★★★ | |
三項間漸化式 an+2+pan+1+qan=0 型 |
特性方程式 t2+pt+q=0 が異なる2つの解をもつ | Type⑨ | ★★★ | |
特性方程式 t2+pt+q=0 が重解をもつ | Type⑩ | ★★★ | ||
連立漸化式 an+1=pan+qbn bn+1=ran+sbn |
p=s,q=rのとき | Type⑪ | ★★★ | |
p≠s,q≠rのとき | Type⑫ | ★★★ | ||
変則マニアック型 | 係数にnなどを含むタイプ | Type⑬ | ★★★★ | |
累乗型 an+1=p anq | Type⑭ | ★★★★ | ||
Snを含んだ漸化式 | Type⑮ | ★★ | ||
「解けない」漸化式の解き方 | Type⑯ | ★★★ |
1つ星(★)→Type①、Type②、Type③、Type④
Type①、Type②、Type④の漸化式は、「等差数列」「等比数列」「階差数列」の性質を
ただ単に漸化式で表現しただけなので、
本質的には、「等差数列」「等比数列」「階差数列」の公式を利用するだけです。
式にビビらずに意味をしっかり考えて完璧に理解すること。
たいていの漸化式は、このType①~③のいずれかに必ず変形できます。
2つ星(★★)→Type⑤、Type⑦、Type⑮
最重要タイプ.ここまでは完璧に理解することが最低ラインの絶対条件です.
3つ星(★★★)→Type⑥、Type⑨、Type⑩、Type⑪、Type⑫、Type⑯
> これらのタイプは、誘導が付いたり付かなかったりしますが典型的なパターン問題なので しっかり理解しておこう。4つ星(★★★★)→Type⑧、Type⑬、Type⑭
今のところスルーでも構わないと思います。
1つ星(★)~3つ星(★★★)をしっかりと理解しておけば,
4つ星(★★★★)は誘導に従えば,解けるようになっています.
とはいうものの,解法の仕組み背景などは一度は知っておいたほうが良いと思います
なお、私が高校生のころは全部ノーヒントで出題されたので、必死で勉強しました。今となっては
そんな苦労話はウソみたいですね、ずいぶん簡単になったものです。
漸化式の基礎 (2014.6.22) |
まず始めに、「そもそも『漸化式』とは何なのか?」という話をします。 僕は『漸化式』とは数列のDNAみたいなもんやと思っています。 つまり、数列の特徴を決定づける遺伝子みたいなもので、 漸化式を見ればその数列の全てがわかるというわけです。数列から漸化式が作られるのではなく、 漸化式から数列が生み出される、という発想をもつことが大切です。 |
Type① an+1=an+q (→等差数列型) type② an+1=pan (→等比数列型) |
漸化式の根底をなす基本型。これらTypeは漸化式を見れば、数列の特徴(等差数列なのか等比数列なのか)が
すぐに分かるので、「漸化式を解く」=「一般項を求める」=「一般項の公式に当てはめる」
という作業になります。 重要度は★ |
Type③ an+1=pan+q PDF1 PDF2 PDF3 |
絶対にマスターすべき漸化式の基本型。全ての漸化式は最終的にこのTypeに帰着するといっても
過言ではありません。「このTypeになればもう大丈夫」と言えるようになってほしいものです。
かなり詳しく解説してあるので、じっくり読んでください。 重要度は★ |
Type④ an+1=an+f(n) (→階差数列型) |
絶対にマスターすべき漸化式の基本型。「漸化式」というよりも単なる階差数列です。 重要度は★ |
Type⑤ an+1=pan+f(n) →f(n)が指数関数 |
an+1=pan+f(n)型の漸化式は入試で本当によく出題されます。
「またかよ」と思えるようになってほしいです。 くれぐれも、Type③(an+1=pan+q型)と間違わないようにしてください。 重要度は★★ |
Type⑥ an+1=pan+f(n) →f(n)が整関数 PDF1 PDF2 PDF3 |
an+1=pan+f(n)型漸化式でf(n)が整関数の場合も入試頻出。
でも、たいてい誘導があるので安心してください。 重要度は★★★ |
Type⑦ $a_{n+1}=\dfrac{p a_n}{r a_n+s}$ |
分母がpanだけの分数型漸化式も頻出。誘導がある場合が多いですが、ノーヒントで
解けるようにしておきたいところ。 重要度は★★ |
Type⑧ $a_{n+1}=\dfrac{p a_n+q}{r a_n+s}$ PDF1 PDF2 PDF3 |
一般的な分数型漸化式。必ず誘導がありますが、その誘導にうまく乗っかる必要があって、
そのためにはある程度の背景は知っておいたほうが良いでしょう。かなり詳しく解説しました。 重要度は★★★★ |
三項間漸化式 an+2+pan+1+qan=0 PDF1 PDF2 |
特性方程式 t2+pt+q=0 が異なる2つの解をもつ →Type⑨ 特性方程式 t2+pt+q=0 が重解をもつ →Type⑩ 重要度はType⑨が★★★、Type⑩が★★★ |
連立漸化式 an+1=pan+qbn bn+1=ran+sbn PDF1 PDF2 |
p=s,q=rのとき Type⑪ p≠s,q≠rのときType⑫ 重要度はType⑪が★★★、Type⑫が★★★ |
連立漸化式のヒミツ (2015.1.2) |
連立漸化式の2つの解き方(加減法的解法と代入法解法)の背景を解説します。 別に知らなくてもどうってことありません。 |
変則マニアック型 PDF1 PDF2 |
累乗型 an+1=p anq →Type⑭ 係数にnなどを含むタイプ →Type⑬ 解法がかなり特徴的な漸化式。これはこれでやり方を憶えるしかありません。 たいてい誘導がありますが、Type⑬は最近ノーヒントでよく見かけます。 重要度はType⑬が★★★★、Type⑭が★★★★ |
Type⑮ Snを含んだ漸化式 PDF1 PDF2 |
犬プリ「和から一般項を求める」と同じ 重要度は★★ |
ハノイの塔 (2017.1.27) |
『ハノイの塔』とは古くから伝わる有名なゲームで、漸化式の意味を理解するための教材として
授業で紹介しています。 |